比べることの重要性 


 さて,内閣不信任案が否決されました.事のてんまつはニュースなどで報道されているので,あえて詳しくは触れません.非常に残念で肩透かしを食らった感じですが,今回はそれを伝えた各新聞にスポットを当てたいと思います.

 皆さんは家で何新聞を取っていますか?読売,朝日など,いろいろだと思います.我が家では朝日と,日経を取っています.でも,あんまり複数の新聞を取っている家庭は少ないと思うんです.だから,たいていは自分が取っている新聞のみを読んでいることになります.

 しかし,今はネット全盛期の時代.毎日複数の新聞を取らなくてもネット上で,他社の新聞の記事を読むことができます.これは非常に有益なことで,客観的な意見をもつためには重要なことです.で,いろんな記事の中でもその社のスタンスが顕著に現れるのは社説です.社の説なんだから当然ですけど.それでは今回の騒動に関する社説を見比べてみます.分かりやすいように,読売と朝日を例にとっていきます.(両者は対極に位置する)

朝日 (11月21日付)

 森喜朗内閣の不信任決議案は,倒閣をめざして賛成の構えだった自民党非主流の加藤,山崎両派が採決直前,欠席戦術に転換したため,否決される見通しとなった.

読売 (同日付)

 不信任案賛成を表明していた自民党の加藤紘一元幹事長らは「名誉ある撤退」を余儀なくされ,本会議欠席を決めた.同調者が十分集まらず,可決に持ち込むのは困難と判断したためだ.

 党執行部が,除名などの処分も辞さない強硬姿勢で進めた反主流派の切り崩しが功を奏した結果だろう.

まずは,その冒頭です.さて,どうですか?まず言葉の問題から.朝日は一貫して『非主流派』という言葉を用いているのに対し,読売は『反主流派』という言葉で統一しています.細かい問題というかもしれませんが,これひとつとっても両者の違いが現れています.非主流は主流にあらず.反主流は主流に反する.ニュアンスわかります?反というと,主流派を肯定的にとらえていることがわかります.非は単に主流でないという意味.

 もっとすごいのが,読売の次の文.〜功を奏した結果〜というところ.要するに,読売としては主流派の締め付け工作がよい結果を生んだという肯定的なとらえ方をしているのです. 

自民党は,体制を立て直し,党改革にも真剣に取り組む必要がある.政党政治再建にもっとも大きな責任を担っているのは与党第一党であるはずだ.

 党内対立の後遺症は残るかもしれない.だが,単なる党内抗争ではなく,政治再生への貴重な契機としてもらいたい.

 森首相を漫然と支える自民党の無気力に、真っ向から挑むかに見えた造反劇が、とんだ茶番劇に終わるとするなら、だれが政治の未来を信じるのか。国民の政治不信は募るばかりだ。

経済の高度成長が終わり、自民党の利益の分配にあずかってきた保守層の間でさえ、意識変化が進む。古い殻を脱皮できず、変化への感受性を鈍らせてきた自民党は、20世紀の最後の年、いよいよ解体への過程を突き進むのではないか――。

 そう思わせた政治ドラマはしかし、唐突に、断ち切られた。

 この上の文章はそれぞれがどちらの記事かわかりますか?(って色分けしてたらわかるって?) 明らかにスタンスが違うよね.もちろん,上が読売,下が朝日です.自民党の利益の分配にあずかってきた保守層〜なんて,ものすごくリベラルな書き方よね.読売は絶対にしない書き方です.ここを読むだけでも筆者の気持ちが伝わってくる.

 はっきり言えば(というか周知の事実),読売は自民党のプロパガンダです.体制側の新聞です.朝日はもっともリベラルな新聞です.大手の新聞について言えば,左よりから朝日,毎日,産経,読売といったところでしょうか.毎日もそれなりにリベラルです.産経,読売はかなり右です.

 どれが良い悪いの問題ではなく,こういうことを踏まえた上で新聞を取捨選択しないと,知らない間にその新聞社の思想につかることになります.今,これだけ情報が簡単に得られる時代,いろんな角度から情報を集め多角的に,客観的に事実を見ることが必要です.

 関西のスポーツ新聞で言えば,各社が阪神の勝利をでかでかと報道しているなかで,1社だけ違う報道をしているのがありますよね.あれが最もわかりやすく典型的な例でしょうか.テレビでもいっしょです.メディアが球団を持って一方的な報道してますよね.やだやだ.

 皆さんもぜひ読み比べてみてください.いっそう理解が深まると思います.

 



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