音痴と制御工学


 皆さんはカラオケに行きますか?ほとんどの人はカラオケに行くと思いますが,僕も例にもれず,カラオケには行きます.お世辞にもうまいとは言えませんが,大声で歌っていると,気分もよくなり,ストレス発散になります.

 僕の母は音痴です.結構すごいです.彼女の音痴はすごかったらしく(今でも)子供たちは音痴になってほしくないという切実な願いのもとに,僕と姉は幼い頃からピアノを習わされていました.おかげで,僕らは音痴にはならずにすんだのですが(僕はそう思ってる),ということで,今回のお話は音痴についてです.何やらタイトルはややこしそうですが,内容は簡単です.

 まず,音痴の定義とは?これはだいぶ奥の深い話題です.ただ,今回は話を歌に限って,歌のメロディーを正確に把握できないことを音痴と定義することにします.こう定義すると,音痴の人には大きく2つのグループがあると思います.まず,自分が音痴であることを認識している(周りから言われて気付く場合も含む)が,メロディーを把握することができない人.もうひとつは,自分が音痴であることを認識できていない人.

 前者の場合,ではなぜ,自分が音痴であることを認識していながら,それを克服することができないのか.まず,考えられる理由は,耳が悪いということ.何も,音が聞こえにくいということではなくて,音階や,メロディーを聞き分ける耳の能力が弱いんではないかということ.音感のしっかりした人は,様々な音階や,音色を聞き分けることができます.要するに,人間フーリエ変換を行っているのです.アナログな波で入ってきた音波を,頭の中で,周波数ごとに分けて認識できるというか・・・そういうイメージです.

 さらに,カラオケで歌うということに話を限定した場合,(絶対)音感を持っている人は,曲の前奏を聞いた瞬時に,その曲のキーを把握することができるのです.そうでない人は,メロディーを聞いて,それと自分の歌声が外れていれば,それを修正しようとして,最終的にメロディーラインに乗ります.まあ,音楽的素養のある人が有利なのはいうまでもありませんが,一概にそうともいいきれないのも事実です.音楽に触れていない人で,音痴で無い人はごまんといますから.

 一方音痴の人(認識はしている)は,自分の歌声とメロディーの差を修正する回路が弱いのです.ここには,さらに2つの理由が考えられます.まず,メロディーは正確に認識できているのですが,それと自分の声との差をフィードバックするシステムが弱いということがあげられます.制御工学では,ある系が存在して,それに対する入力値と,その出力値があります.目標値と出力値の間に誤差があれば(それが普通)その情報をもともとの入力値に反映させるという理論があります.これをフィードバックというのですが,要するにこの回路が弱いのです.カラオケでいえば,入力値が自分の意識,出力値が実際に発声された声,目標値がメロディーとなるでしょうか.こういう人は,訓練次第で音痴を直すことも可能でしょう.

 次に考えられる理由として,そもそも,メロディー(目標値)の設定を誤っている人がいます.これはなかなか厄介です.要するに,系の性能にかかわる問題ですから,音痴を直すには,まずその人の頭の中にある,音階の設定を調整なおす必要があります.人によっては,初期化する必要がるかも.

 ここまで書いてきて,ふと思いました.別に何を言いたいわけでもないんです.ただ,人間っていうのは,様々なところで,自分の行動を制御してるんだなぁっていう単純な感動があるだけなんです.それだけです.上記の矯正法はなんの医学的根拠もありません.あくまでも,独断と偏見です.要するに,カラオケは楽しく歌えればいいんです(周りの人が苦痛と感じない程度であれば).

 そうそう,いい忘れましたが,自分が音痴だと認識していない人についてですが,その人は,まず,自分を見つめなおして,それから周りの状況を正確に判断できるようにしてください.性格に問題があると思われます.っていっても,自分で気付いてないんやから,どうしようもないけどね.周りの人が気付かせてあげてください.すべてはそこから始まります.

 



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