宇宙開発の意義


 アメリカに滞在している間に,NASAが火星に着陸船を着陸させることに成功したのですが,残念なことに,着陸と同時に地球(ヒューストン)との交信が途絶えてしまったのです.そんな記事をNewsweekで読んで,そのことについて,クラスで議論する場がもうけられました.かなりNASAに批判的な記事を読んだあとのせいか,みんな宇宙開発に対して,厳しい意見があい次ぎました.1人の人は宇宙開発なんかに巨額の金をつい込むより,環境のためや,飢餓のためにお金を出したほうがよっぽどいいとのたもうたわけです.またある人は,宇宙なんかに住みたくない,地球が一番だ,だから宇宙なんかに行かなくていいと言いました.皆さんはどう思いますか?

 確かに,彼女たちの言うことはもっともな面もあります.地球温暖化や,環境破壊など,我々の地球に多くの問題を抱えている中で,火星に行こうとうつつを抜かしている場合じゃないと.そんなことより,核のごみの処理方法とか,海面上昇で沈みかかっている国のことを考えろと.

 僕が宇宙工学を専攻していることを知っていた先生は最後に僕に発言の機会を与えてくれました.そのときの内容とかぶりますが,僕の考えを書きたいと思います. 

 まず最初に言いたいこと.それはうつつを抜かすってなんて素敵なことなんだろうってことです.今の社会はすべてが効率重視で,すべてのことに最優先して効率が重要視されがちです.そんな中にあって,宇宙開発という分野は,僕が思うに唯一うつつを抜かしている産業分野ではないでしょうか?もちろん,宇宙開発においても,効率や,利権の問題,アメリカのほぼ独占など,様々な問題も抱えていますが,根底にあるのは,未知なる宇宙に飛び出していきたいという,少年の頃の夢の延長なのです.大抵のことが科学的に秩序化されている中で,ほんとに宇宙という広大な空間は莫大なる未知数を我々に与えているのです.

 こんな時代だからこそ,人類が共通で見ることのできる夢が大事だと思うんです.もし,火星に生命が存在していたとしたら,ほんとにすごい発見です.また,火星という星は,太陽系にあって,地球に非常に酷似した星です.この前月に行ったから,今度は火星ということではないのです.地球と成り立ちが非常に似て,人類がたどり着ける,唯一の惑星なのです.これから先,火星についての調査研究が進めば,それを地球に還元することができます.火星は昔どんな星だったのか,なぜ今のような状態になったのか,などを知ることによって,地球の過去や,これからの行く末も占うことができるのです. 

 火星だけではありません.宇宙ステーションにしてもそう.宇宙という,極限の環境は,我々に多大なる影響を及ぼす,ポテンシャルを持っているのです.(まあ,このままではアメリカが特許を独占してしまうという恐れもありますが・・・)

 最近相次いで,日本の宇宙開発が挫折しております.科学技術庁宇宙開発事業団のH-Uロケット,文部省宇宙科学研究所のアストロEなど.しかしながら,航空宇宙技術研究所では次世代の宇宙往還機の研究を進めるなど,頑張っています.僕的には,これらの団体が省庁の枠を超え,ひとつの組織になるのが一番いいと思うのですが.

 僕は小学校の頃から今の進路を目指しましたが,自分の選んだ進路に後悔はありません.むしろ進んでよかったと思っています.僕が思うに,今一番怖いのは,みんなが,あーやっぱり日本人は宇宙開発は無理だ,と思って,宇宙産業に対する風当たりが強くなることです.ただでさえ小さな産業にとって,国民の後押しがえられないのは非常につらいと思います.決して僕は関係省庁のスポークスマンではありません,一学生として.

 この前失敗した宇宙研のロケットは180億円だとか.ちなみにこの前倒産した千昌夫の会社の負債額は1034億円です.住専の処理に使われる公的資金は何十兆円という規模です.それこそ,もっと税金の使い方を考えるべきです.

 えらくワンサイドな記事になりましたが,ご理解のほどを.

  



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